第10章 嘘と真実
『ずっと考えていたんです。どうして私なんかが雄英にいるんだろう?って』
「それは……お前が試験を受けて合格したからだろ」
『まあ、そうなんですけど』
まるで他人ごとのように話す 凛
『けど先生、よく考えてください。私の個性は確かに強いと思います……保持者が私じゃなければ』
入学当初から思っていたが、 凛は物事を卑屈に考えることが多い。そのせいか成績にも影響を及ぼし良くも悪くも普通だ
『この個性のお陰で運良く雄英のヒーロー科に入れました。そしていずくんや爆豪君とまた一緒に…と思って浮かれてました』
『先生は知らないだろうけど、私たち幼い頃は仲が良かったんです』
『中学生の頃は擦れまくってたけど、高校になったらまた仲良しな3人に戻れるんじゃないかって、2人の側で2人がヒーローになるところを見れるんじゃないかって』
『馬鹿みたいですよね。2人から拒絶されることが嫌で離れて行ったのは私なのに…都合の良いことばかり考えて』
『それに体育祭の時…いや本当はもっと前から気付いてたんです。けどずっと気づかないフリをしてました』
『私…ヒーロー科にいるのに皆みたいに本気でヒーロー目指している訳じゃない』
『ただ、幼馴染の成長を見守りたいなんて不純な理由でヒーロー科にいる…場違いな奴だって』
相澤は淡々と話す目の前の1人の生徒を見て思った。確かにヒーローを目指す者の意思は様々だ。どんな理由でさえ、ヒーローになるのならそれでいい
ただ、
どんな理由でさえ、誰しもがヒーローになりたいと思っている
「お前は…1度もないのか。ヒーローになりたいと思ったこと」
『…はい』
ヒーロー科の先生の前ですみません。と軽く頭を下げられ相澤は何も言えなくなった
彼女がヒーローになりたくて挫折しかけているのなら、止めようと思っていた
お前なら…このA組の仲間たちとなら、お前だってヒーローになれる
相澤らしくもないが、目の前の生徒を惜しいと思っていた
『ねえ先生、何をやっても中途半端な人が本気の人たちの中に混じるとどうなると思います?』
『心が罪悪感で溢れるんですよ』
それほどまでに、彼女にはヒーローとしての素質と才能があった