第10章 嘘と真実
「トニー・スターク……?」
『はい』
それが私の父の名前でした。何とでもないようにあっけらかんと凛は言う
だが相澤は違った。
トニー・スタークといえばアメリカを代表するヒーロー、そして天才発明家であり大富豪。いくら世間に疎い相澤でも知っていることだ
「お前まじか…」
『まじです』
こんなこと嘘つく訳ないじゃないですか…。とため息交じりで言われるも、相澤の頭は混乱している
『私も初めは驚きました。会ってすぐに日本での私と母のことを聞かれて…』
髪の色も肌の色も全然違っていて
話し方はどこか高飛車だし、隣には知らない男の子がいるし
本当にこの人は母の知人なのかな?って
私の父親候補なのかって
兎に角、怪しいなって思ったんです
『けど1つだけ、彼と私の共通点があったんです』
「共通点?」
なんだ?と相澤が問いただす
『はい。幼い頃から父親がいないことも不思議だったたけど、もう一つ一つ不思議に思ってたことがあって…』
とんとん、と凛は青く光りを帯びる自分の瞳を指差した
『サングラス越しの彼の瞳の青が光っていて、あぁ、そうか。って何処か納得する自分がいました』
母の目は髪と同じ黒
けど私は髪は黒いのに目だけは青かった…
理由なんて簡単だった
『彼はサングラスで隠しているつもりみたいでしたけど、バレバレてました。その、なんだかすごく優しく微笑んでいて……やっばりこの人が父親なんだって、』
そこからは沢山話して夜は………エキスポを楽しんで
最後の日にお別れをする時、言ったんです
またね、お父さん。って
そしたらすっごく驚いてて面白かったんですよ?
『今でも思い出したら……あ、…まあざっとこんな感じです』
「おい待て」
話は終わりとでも言いたげな凛に相澤は制止をした
「確かにお前の出生がとんでもないことは分かった。だがそれとこれとは別だ。どうして、それがお前が雄英を辞める理由になる?」
今度は俺が尋ねる番だと相澤はイスに深く腰掛け凛を見た。だがそんな相澤に対して凛は少し困ったように言った
『そんなの…決まってるじゃないですか』
"私が私らしくあるために"
『ここにいることを辞めるんです』