第10章 嘘と真実
『私、母子家庭だったんです。幼い頃に母が死んで…そこからは祖母と二人でした』
ぽつりぽつりと話し出す凛に相澤は知っていると伝えるために頷く。担任をしている身だ、個人情報も入ってくる
『ずっと、ずっと祖母と二人だったんです。これからもそうだと思ってました』
そう言いながら何かを思い出すかのように顔を伏せた
『母が死んで確かに悲しかったけど…明るく優しい母がよく言っていたんです』
"あなたは一人じゃない”って
『最初はよくわからなくて……あぁ、仲良しのいずくんや…爆豪君、家族の祖母のことかと思ってたんです。みんながいるから一人じゃないってことかなって』
彼女の母は6歳の頃だと聞いている。なのにそんな頃から冷静に自身で判断をしている凛は本当に賢いと相澤は思った
『けど、違ったんです』
友達でも、祖母でもない
他の誰かのことを母が思い出して話していたんだなって
今なら理解できる
『物心ついたときから不思議だったんです。他の子たちにはいるのにどうして私には?って……母に聞いてもいつも曖昧な答えしか返ってこなくて』
"え、……そうだなあ…凛が大きくなったらね”
『大きくなったら教えてあげる、それが母の口癖でした』
私も素直だったんで鵜呑みにしてたんですけど、よく考えたら怪しいですよね
私が大人になる前に母は亡くなって、毎日が忙しくなって…今の今まで忘れてたんです
けど……
『夏休みに入ってすぐでした。家に手紙が届いたんです、それもまったく知らない人から』
まあびっくりしますよね、差出人の名前が英語で…祖母を騙そうとした詐欺かななんて思って自分で開けて確かめたんです
『そしたら、何て書いてあったと思います?』
と尋ねられ相澤は首を横に振った。すると凛は笑みを浮かべながら言った
『母の……瞬木凛々花の秘密を教えてやるって、Iエキスポのチケットと一緒に』
いつも笑っていて優しい母との記憶
そんな母のことを何も知らない自分
知りたい、母のことを理解したいと思いました
『だから私、行ってみたんです……そして会いました』
私の父親…トニー・スタークに