第10章 嘘と真実
『辞めます』
数年前のあの日。林間合宿でヴィランから襲撃を受けた雄英の生徒たち。その中でも重症を負った生徒の一人が瞬木だった
「…いきなりなんだ、主語を言え」
我ながら意地の悪い質問だとは分かっている。今年の1年は根性のある奴が多く相澤も認めたくないが肩入れしたくなるくらいには気に入っている
『……先生、私、辞めたいです』
ベッドの上にいる瞬木は真っ直ぐに俺の目を見て言った。透き通るような青い瞳は訴える
「だから何がだと言ってるだろ」
ここの病院には雄英生が多く入院している。次々と目が覚めていく中、最後に目を覚ましたのが瞬木だった。
目を覚ましたのは1日前、他の生徒にはまだ彼女が眠り続けていたことも怪我を負っていたことも言っていない。それは何故なのか
ヒーロー協会からの圧力がかかったからだ
瞬木凛の病室に足を踏み入れることは許さない、許可が下りるまで待機していろ。と
ふざけるな、俺の生徒だ。
怒りに任せて校長と話す協会の奴らに掴みかかろうかと思った
だが雄英で会見を終わらせたあと神野区での事件が解決、オールマイトの引退…相澤は人生で1番と言えるほど忙しかった。だが相澤とて目が覚めない生徒の心配をしていないわけではない
『雄英を……皆とヒーローを目指すことを、辞めさせてください』
何度も校長に訴え、やっと対面が許された生徒から出た言葉が妙に部屋に響いた気がした
白い病院服に身を包みぎゅっとシーツを掴むその手は白く、とても細い
「……お前、それなりの理由はあるんだろうな?」
引き留めようとする自身の言葉に驚く
『はい』
そしてハッキリと答えた彼女はゆっくりと口を開き話し始めた