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The one that got away.

第9章 ファントム・ルージュ





「良かったんか」

『…何が?』

「あの蜘蛛野郎、仕事仲間だろーが。それに…まだやることあんじゃねえのかよ?」

『……あるよ、けど私一人でもう大丈夫。彼ってお調子者だから…居たら邪魔になる、一人の方が早く終わるし労力も減る…合理的でしょ?』


かつての教師の口癖を言ってのけた凛。その足取りは朧だが確実に爆豪に近づいている


『だから爆豪君も私が安全な所に飛ばしてあげる…肩掴むよ』


凛が少し躊躇しながら爆豪の肩に手を置こうとした時だった


「なあ、いいこと教えてやろうか?」

『…っ、…なに?』


その手を爆豪が掴み引き寄せ凛との顔の距離をぐっと近づけた。そして目を合わせるとニヤリと笑ってみせたのだ


「昔っからそうだよな」

『?』

「根本的なところが変わってねえんだよ」

『?意味が分からないんだけど…』


苛立ちながら爆豪を見る凛。そんな凛の姿に爆豪は懐かしい何十年もの前の記憶を頭の中に思い浮かべた


「嘘つくときのテメェには癖がある」

『……は、』

「まあ自覚があるとは鼻っから思ってなかったが……凛、テメェ」


"顔には出ねえわりに、よく口が動くよな”


『……』

「本当のこと言えや。一体何のために今回の作戦を組んだ?何故選ばれたのが俺たちだった?今回の本当の目的は捕まえたアイツらじゃねえだろ。それに……この6年、テメェはどこで何をしてた?答えろ、凛」


核心をつくような鋭い爆豪の言葉

凛は目を一瞬見開いたが、ゆっくりと俯いた


『…ほんと、やだな』

「……あ?」

『何でだろうね、いつも…ずっと昔からだよ。爆豪君にだけは見透かされてるような気がして、嘘つけなくて……今回はいけると思ったんだけどなぁ』

「おい凛、顔あげ『かっちゃん』………は、」


凛に手を伸ばそうとしていた爆豪だったが、ピタリとその手を止めた。呼ばれた名は確かに自分のものだが、その呼び方はとても懐かしいものだったからだ


固まる爆豪を見た凛は彼の手に手を絡ませた


『かっちゃん、バイバイ』

「っ待て……っっ!!!」


そして、その場から最後の一人が消えた


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