第9章 ファントム・ルージュ
「かっちゃん!小さな子にその言い方はないだろ…」
「あ?ならテメェならどうするんだクソデク」
「わっ!投げないでよ!!」
爆豪はヒョイと緑谷に女の子を投げた。そしてそれを緑谷は慌ててキャッチした
「……えっーと、空ちゃん?だよね」
「……でく?」
「…うん、デクだよ。君を助けに来た」
「!!…デクだ!」
ぱあぁと花が開いたように顔を上げた女の子は緑谷の体にしがみついた
かつてオールマイトのように子供から大人まで絶大な人気を誇る緑谷。その彼を知らない、憧れない子供は今の日本にはいない
「やっぱ緑谷はすげえな」
「…ッケ!!」
女の子が安心したかのように緑谷の腕にしがみつきながらハッと気がついたように凛を見た
「おねえちゃん!」
『なあに?』
そして体を乗り出すようにしてから「ん!」と言って拳をグーにした
「そらも!おねえちゃんみたいにカッコいいヒーローになるね!助けてくれてありがとう!!」
ほらおねえちゃんも!と言われるがままに凛は拳をグーにして女の子の小さな拳と付き合わせた
『お姉ちゃんはヒーローじゃないよ』
「どうして?おねえちゃんはそらを助けてくれたよ?」
『そりゃ…お仕事だからね』
「?よくわかんない!けどカッコよかった!」
こんな危機的状況でも笑う女の子に凛も無意識に笑みを浮かべた。子供の純粋さは時には癒しになる
『…そっか。空ちゃん、元気でね』
「うん!おねえちゃんもまたね!」
そう言ってグーにした拳を開きハイタッチをした。すると女の子と女の子を抱えていた緑谷の姿がその場から消えた
「…瞬木、そんな顔出来たんだな」
『轟君……案外失礼だね』
「いや、褒めたつもりだったんだが…わりぃ」
『っふふ、何それ?』
そう言って次は轟の肩に手を置いた。そして何か言いたげな顔をしながら轟は消えた
『と、次は』
クルリと振り向き凛は目を細めた
残るはあと二人だ