第9章 ファントム・ルージュ
「これは…早く見つけないとヤバイね」
『…ねえピーター、おかしいと思わない?』
「ん、何が?」
75階に到着したピーターと凛。そこは爆破の影響からか崩壊寸前で煙が充満していた
二人とも周りを見渡し生存者を探すが一向に見つからない。すると凛は探すのをやめピーターに尋ねたのだ
『そもそもジェイが生命反応を見過ごすなんてあり得ない。ましてやこのビルのコンピューターをハッキングした後で何て』
凛の言う通りだった。この優秀すぎる人工知能はどんな時でもどんな場所でもすぐに情報を得ては主に正しく伝える。今までに1度も伝達ミスなんてものはなかった
「じゃあ何?カレンたちのセンサーにも引っかからないほど小さい人だってこと?アントマンみたいに?」
『アントマンでもジェイたちは見つけるよ……ちゃんとそこに存在している人間なら、ね』
何故か意味を含むような言い方をする凛は腕を組み崩壊した壁の一部に寄りかかった。よく顔を見ると少し口角が上がっているようにも見える
「リン?」
『ピーター……私の個性、知ってる?』
「……はぁ?今さら何言ってるの?そんなの知ってるに決まってる。何年間キミといると思ってるの?」
突然意味不明な発言をする凛にピーターは飽き飽きしながらも答えた
「キミの個性は"テレポート”自分自身を瞬間移動させたり触れたものを移動されることがで……き、る」
『…そう、それが私の個性。私だけの…唯一無二のものだと思ってた』
まさか、とピーターは凛を凝視した。すると凛は先程と同じように笑みを浮かべながらピーターの後ろの瓦礫に手をついた
『似たような個性があっても可笑しくないでしょ?』