第9章 ファントム・ルージュ
《リン様、ヒーローたちが到着し40階までの人々を救出および保護、残り120人です》
『あの社長さんたちは?』
《只今ヒーローデクが警察に引き渡しています》
『そう』
大きなスクリーンのあるコンピュータールーム。そこはこの建物の中でも最上階に位置する場所。本来なら一般人は入ることの許されない部屋だ
だがピーターたちは入れた。何故なら凛がボスと呼ばれる男のパソコンからこの部屋のパスワードを引き抜いていたからだ
「けど流石だねリン……ここまで全てシナリオ通り?」
『全てじゃない』
「えぇー、ならほとんど完璧ってこと?…ボク、キミ以上に恐ろしい人知らないよ」
ハハッと笑うピーターを他所に凛は『ジェイ』と呟いた。すると凛の目の前には巨大なスクリーンに負けないほどの大きさのキーボードがうっすらと浮かび上がった
『ピーター』
「はいはい手伝うよ。ここに上がってくるまでに取り残されてた人たち、キミが全員外に移動させちゃったんだし……出番なしは嫌だよ。何もしなかったらまたリンに押し付けたな、ってスタークさんにも怒られる!」
そうぼやきながらピーターは凛の隣で彼女と同じように作業を始めた
『だってピーターより私が瞬間移動させた方が速いし、それにトニーはそんなことで怒らない』
「怒るよ?あの人リンのことだと厳しいからね!」
『拗ねないでよ』
「拗ねてない!」
《リン様/ピーター》
『「何?」』
まる子供のように言い争う二人の間に割って入ったのはAI2体だ
《お話し中すみません》
《75階に生存者がいます》
『「!!!」』
もう全員ヒーローたちが救出していたと思っていた二人は顔を顰めた。そして凛はため息をついた後ピーターの肩に手を置いた
『ジェイ、場所は?』
「この階のすぐ真下です。ですが」
「オーケー行ってから確かめよう。データは…まだ大丈夫そうだしね」
ピーターが言った直後、再び彼らはその場から姿を消した。大きなスクリーンにはダウンロード15%と書き記されたままだった