第8章 目的
そこからは男のヒーローに対する思いをただ聞くだけであった。
ヒーローは人々を助ける存在であるべき
ヒーローは最も大切に扱われるべき人種である
ヒーローのために我々が支援をして彼らの手助けをしなければならない
聞けば聞くほど背中から嫌なものが這い上がるような感覚であった。
凛の話でこの社長がヒーロー主義者であると聞いてはいたが、自分たちがこのように見られているのはあまりいい思いはしない
デクやショートは確かにヒーローだ。だがそれは緑谷や轟と言った人物が存在しているからこそだ。
ヒーローだって人間であって見世物ではない
「おっと、話が脱線してしまって申し訳ない。本題はここからだ」
「?」
「私はね、君たちヒーローを本当に尊敬しているんだ…いや寧ろ尊敬などでは足りない。君たちはこの世界に欠かせない存在なんだ」
そう言い男は手にした装置のボタンで壁に大きなスクリーンを写し出した
「だからこそ君たちは光でなければならない…」
そのスクリーンに写し出されたものを見て緑谷と轟は大きく目を見開いた
そこに写っていたのは残酷な光景であった
何処の国かは分からないほど荒れた土地
武器を持って戦う人々
追われ、そして逃げまとう女や子供たち
人だった物にすがり泣きわめく血だらけの人
「っ、 もういいやめろ!!」
そう叫んだのは轟であった。よく見るとその拳は震えている。そしてあまりにも惨すぎる光景に緑谷は口に手をおいた
「…君たちがこの国でヴィランと戦っている間にも世界でも戦いが起こっている。だが勘違いしないでほしい、別に君たちを責めているわけではない……寧ろ逆だよ」
ヴィランでもなければヒーローでもない
ただの何の価値もない人々の無駄な争い
この世界の汚れた部分
暗い暗い闇
光が輝くためには欠かせないものたち
「君たちヒーローに永遠の輝きを与える。そのために私は紛争をしている彼らに武器を与えているんだ。そうしたらヒーローは……もっと美しく輝けるはずだろう?」
表向きはヒーロー好きの大企業社長
裏の顔は闇の武器職人である