第4章 必然で突然
「集合場所に居ないから探したよ!さ、行こ!」
「…あ?誰だこいつ?」
観客席から物凄いスピードで駆け降りてきた少年は困惑して動きを止める凛の腕を掴んだ
そして、それを見た爆豪は眉間にシワを寄せながら少年を睨んだ
『…だれ?』
「え、…あっそっか!それもそうだね。うんうん、こうしよう!」
と少年は一人、いくらかを呟いた後、被っていたキャップ帽を深く被り直し口元だけに笑みを浮かべた
『え、…きゃあ!!』
少年の個性だろうか。少年は力強く凛の体を傾け、そのまま自分の腕の中にしまいこんだ。
「テっメェ何してやがるこのクソ野郎!!!」
「おっと、危ない危ない!」
爆豪が浴びせようとした爆破をひらりと避け、少年は凛をもう一度抱え直し言った
「ボク、この子に用があるんだ。キミたちには悪いけど貰っていくよ」
『!?ちょっと、』
「しーっ。口閉じてないと舌噛むよ?」
『!!!』
唇に指を当てられた凛は思わず黙った。そして、それを見た女子の誰かがキャアと叫んだ
「じゃあ、ボクらはこれで…」
「ちょ、ちょって待って!」
「ごめん待てない!これ以上遅くなると怒られるや」
緑谷の制止も聞かず、少年は軽やかに凛を担いだまま去って行った
「な、何だったんだ彼は…」
「てかリアルなお姫様抱っこ始めてみたわ」
「いや、それよか瞬木のやつ、キャアって言ったぞ。キャア!って」
「あんなに可愛らしいなんて…。瞬木さんの新たな一面ですわ」
「いや、マジでアイツだれだよ…って、爆豪!?」
嵐が去った後。それぞれが思い思いの言葉を発する中、ただ一人、爆豪がわなわなと震えていた。そして、それに気がついた切島はヤベェと叫んだ
「爆豪落ち着けって!な!」
「どうしたの切島君……って、かっちゃん!?」
まずい、とその場にいた誰もが思った
「…ざっけんじゃねえぞ、クソがぁ。あぁ?何してくれてんだアァ!?」
バチバチと手の内に火花を散らしながら徐々にその威力は上がっていく。ヤバイって逃げろ!!と誰かが叫んだ時だった
「俺差し置いて何してんだクソ野郎があぁアアアア!!!!!」
その日、大きな花火が空高く上がった