第1章 終わりと始まり
「南ー、未来の人妻泣かすなよー。
ダンナに怒られるぞ」
「えぇっ、俺っすか!?」
大丈夫か?とハンカチを渡してくれる、1つ先輩の北見さん。
“ 未来の人妻 ” そう言われて、フラッシュバックしたあの光景。
「せ、先輩!?」
その光景に、頭が真っ白になった。
「ん......」
目を開けると、白い天井が目に入った。
横を見れば大きな兎のぬいぐるみ。
少し硬めのベッドの上に寝かされていた。
「あ、先輩起きました?
体調は?」
「えっ、南くん!?
どうして?」
エプロン姿の南くんに驚きが隠せない。
「どうしてって、ここ俺の部屋ですもん。
家主が部屋に居ちゃいけませんか?」
「あ...そうなの。
ごめんなさい...」
ベッドの上で頭を下げる。
「謝らないでくださいよー、冗談ですってば!
ジャケット勝手に脱がせちゃったんですけど大丈夫ですか?」
ハンガーに掛けられたジャケットを指す。
「大丈夫よ、ありがとう」
「良かった...。
あとでセクハラなんて言われたらどうしようかと!」
「あの、南くん?
私は一体...それに仕事は...」
「あぁ、仕事ならご心配なく。
織田がエントランスで辛そうだったので送らせました、って北見さんが部長に言ってくれました。
先輩のことは放っておけないし、何より朝から顔色悪かったから心配で...」
「迷惑かけてごめんなさい...。
もう大丈夫だから、かえ...」
「ダーメ。
ダメです、先輩。
心配だから今日は泊まって?」
「そんなこと出来ません!
大体私には婚約......あ......」
婚約者が居る。
そう言おうとした。
何言ってるんだろう、私。
自分で婚約破棄したのに。
「先輩?」
表情が強張った私を心配そうに見つめる。