第1章 終わりと始まり
目を覚ました時には、日がどっぷり沈んでいた。
「寝過ぎた...。
あ、そういえば......」
式場のキャンセルは彼がやってくれるって言ってたけど、出した招待状のキャンセルは私がやらなきゃよね。
彼がパソコンを使えない為、パソコンが必要になる作業は必然的に全て私がやっていた。
部屋から持って帰って来た私のノートパソコンを立ち上げ、文書を作成する。
作成した文書を私のスマホに送り、コンビニで文書をコピーした。
些か雑な仕上がりになってしまったけど、仕方ない...。
明日出勤前にポストに投函しよう。
元婚約者に挙式中止の案内を送っておきました、と一言だけメッセージを入れた。
翌日、私は普通に出勤した。
もちろん朝に挙式キャンセルの案内を投函してから。
「おはようございます。
一昨日はご迷惑をお掛けしてすみません」
「いやいや、良いんだよ。
体調の方が大事だからね。
それより、挙式は来月だろう?
準備とか忙しいだろうし、身体には気をつけるんだよ」
ニコニコと優しい笑顔を向ける部長。
「あ......」
挙式、の言葉に心臓が嫌な音を立てる。
「すみません、挙式はキャンセルしました。
今朝案内を出したので数日で届くと思いますが......」
「...すまない」
「いえ!
部長が謝ることでは!」
少し申し訳ない気持ちになりながら仕事を始めた。
私の仕事は営業事務。
営業部が取って来た契約のデータ作成と契約者様への契約内容の確認の電話、電話対応。
「おはようございます、先輩。
今日も多いですね、仕事」
「おはよう、南くん。
事務の仕事が多いのは営業部の方達が頑張って契約を取ってくれているからよ。
仕事が多ければ会社も安定するし...ね?」
「そうですね、頑張りましょう」