第1章 終わりと始まり
「行ってらっしゃい、南くん」
南くんは会社へ、私は自分の部屋へ戻った。
昨日までは綺麗だった筈なのに、間違えたように散らかっていた。
......特にベッド回り。
荷物を詰め、玄関を施錠したあとで、合鍵をポストに入れた。
調理器具とかも持って行きたかったけど、使う気が失せたので辞めた。
新しく部屋を借りて、買おう。
ちょっと懐が痛む気がするけど、結婚後に新居を買う為に貯めていたお金がある。
うん、大丈夫、問題ない。
部屋が決まるまではホテル暮らしかな。
とりあえず会社の近くのホテルで部屋を借り、不動産屋へ向かった。
「そうですね...そこ近辺ですとあまり多くなくて...。
ざっとこのくらいですかね」
人当たりの良さそうな柔らかな雰囲気のおじいさんが、資料を見せてくれる。
「ありがとうございます、拝見します」
会社の近くの物件は全部で5件。
「ここ住みたいです」
全部に目を通し、その中でも気に入った部屋を指した。
「あぁ、ここね。
日当たりも良いし、交通も苦労が少ないと思うよ。
気に入ったなら今から見に行くかい?」
「良いんですか?
ぜひ行きたいです!」
おじいさんと部屋を見に行って、内装を見終わる前に決めた。
唯一難点をあげるとしたら収納スペースが少ないくらいだ。
それでも一人暮らしをするには十分な収納スペースはある。
事務所に戻って、契約書類を書き、ホテルへ戻った。
検査とクリーニングをして、3日後には引渡しが出来るそう。
それまでに休みは今日しかないから、今日の内に必要なもの買わないと。
食器や調理器具、ベッドにカーテン。
あげたらキリがない。
とりあえず最低限のものだけ買い、業者への手続きも済ませてホテルに戻る時にはヘトヘトになっていた。
「疲れた...」
ベッドの上に横になると、襲って来る眠気。
抗いようのない眠気にそのまま意識を手放した。