第1章 終わりと始まり
「おはよ......先輩」
料理を作り終えた頃、南くんが起きて来た。
「おはよう。
朝ご飯出来てるよ」
「は?え!?マジ!?」
「え?うん...ダメだったかな...?」
「ぜんっぜん!
絶対夢だと思ってたから...ありがとう、穂乃香さん!」
歯を見せて笑う。
「あ、名前...」
「俺が呼びたかったから。
仕事中はちゃんと先輩って呼びますから」
「分かったわ」
「うわー、凄い美味しそう!
これ全部穂乃香さんが作ったんですか?」
「うん、そう。
嫌いなものあったらごめんね」
「大丈夫です!」
ご飯を作って、喜んで貰えるって嬉しいな。
胸が温かくなる。
「いただきます!」
ピョコンと出る寝癖もそのままに、笑顔でご飯を食べ始めた。
「美味い...!」
「本当?良かった...」
ニコニコ食べてくれて、心が和む。
「ご馳走様でした!
あ、片付けは俺が...」
「お粗末様でした。
ううん、大丈夫よ。
南くんは支度しないと、でしょ?」
「う...はい。
すいません」
ショボンと落ち込む姿が可愛い。
そんな彼に支度を促して、食器を洗った。
昨日着ていた下着も身につけ、南くんに言ってジーンズを借り、放置していたスマホを覗いた。
スマホを手に取ると、画面には収まりきらない数の通知。
そのほとんどが元婚約者とヒメ。
内容に軽く目を通して、目眩がする。
「誰からですか?」
「え?あ、なんでもないの」
「嘘はダメですよ?」
「...元婚約者と浮気相手から」
「即ブロックしましょ。
そいつらの言うことなんて、聞く意味ないですよ」
「まぁ、そうね。
あんまり酷くなったらブロックするわ」
「酷くならなくてもブロックして良いと思うのに...。
先輩優し過ぎますよ」