第1章 終わりと始まり
お風呂から上がって、南くんが服を貸してくれた。
「すみません、女性物がないので...。
その......下着...とかも......」
申し訳なさそうに手渡してくれた服はネイビーのTシャツ1枚。
丈は長そうだから、これ1枚でも着れそうだ。
「用意してくれるだけで十分よ、ありがとう」
南くんが敷いてくれた布団に、2人で入る。
少し窮屈だけど人の温もりが近くに感じられて、嫌な感じはしない。
「先輩、俺、本気で好きですからね。
先輩のこと」
後ろから抱きしめられ、電気が消えた。
背後に感じる温もりが心地良くて、すぐに瞼が重くなっていった。
「ん......」
朝、目覚ましの音もなくスムーズに目が覚めた。
目を開けると見慣れない部屋。
あ、そっか私昨日南くんの家に...。
昨日のことを思い出して、隣を見れば静かな寝息を立てて眠る南くん。
ご飯どうするのかな。
泊まらせて貰ってるし作った方が良い?
でも流石に無断でキッチンとか食材使う訳にはいかないし...。
少し申し訳ない気持ちになりながら、南くんの身体を揺らした。
「あれ...せんぱいだ...」
「おはよう。
朝ご飯なんだけど、私が...」
「穂乃香せんぱい......すき」
ふにゃりとした笑顔に、胸が大きく脈打った。
私を抱きしめ直し、眠りに入る南くん。
なんだ、この可愛い生き物は。
可愛過ぎでしょ、反則でしょ。
歳上心なんてないつもりで居たけど、これはキュンと来るものがある...。
「朝ご飯、私が作っても良い?」
「どーぞ。
なんでも好きに使って...」
半分夢の中に居るようなくぐもった声。
「可愛い...」
そんな南くんの髪を数回撫で、腕から抜け出した。
髪をまとめ、手を洗い、料理を始める。