第1章 悪戯好きの黒猫
「鬼灯様、こいつなんとかなりませんか?微妙にしぶといんですよ。微妙に」
「微妙微妙言うな!!」
ホントこまったさんだねこの人は。
決まってたスケジュール押してるぞー…
「お前、俺と勝負しな。それとも怖いか?」
「お前失礼だぞ!」
「鬼灯様はなぁ、偉いお方なんだからな!」
「へーえ、どれくらい?」
「閻魔大王の第一補佐官、鬼の中でもトップの鬼神なんだぞ!」
「大したものではありませんよ。官房長官みたいなもんです。地味地味」
「キーッ!!腹立つ!!!」
例え世間では『官房長官みたい』でも、私にとっては神同然です。
…いや、待てよ。ここは地獄なのに最上級の表現が『神』っておかしいか。
じゃあ『閻魔』?いやいや遠くなった気がする。
「そもそも我々は鬼が島のゴロツキとは違い、身を粉にして働いています。倒される筋合いはありません。それより今の貴方は定職にも就かず、フラフラと…」
「お前は俺のおかあさ…いや、おばあさんか!!?」
私が余計な思考にハマっている間に、どうやら桃太郎がキレたらしい。
(キレかたは古いけど)
「殴る蹴るのタイマンはったろーかあぁあ!!?」
「あぁ、殴る蹴るで構わないならすぐに解決するので有り難いです」
「…いや、暴力はよくないよね」
ガンッ
ガラガラッ
「地獄なので暴力で解決しましょうよ」
鬼灯様が軽く金棒を一振りすると、岩が崩れた。
「…椿さん、さっき椿さんもアレで殴られてましたよね?」
「そーだね。大丈夫慣れてるから!ほら、もう血もとまったよ」
「(乾いた血がこびりついたままだから怖いな…)」
ホラー映画の状態でにこっと笑う椿に、茄子も唐瓜も生命の神秘を感じざるを得なかった。