第1章 悪戯好きの黒猫
「よ、よくもやってくれたな…不意打ちとは卑怯な…」
「あぁ、先程は部下が大変失礼を致しました」
よろよろと立ち上がる桃太郎が再び鬼灯様に向き直った。
「いえ鬼灯様、謝ることないですよ。こいつ相手の都合も考えず突然やってきて道場破りみたいなことはじめたんですから」
「道場破りですか…生前悪い鬼の退治でご活躍なさったのを誇るのはいいですが、大義を見失っちゃいませんか?」
フッとかっこつけて、桃太郎は肩に刀をかける。
いちいちキモい。鬼灯様が穢れるから近づくな。
「いーや、見失ってないね。俺は鬼と戦ってこそ桃太郎なんだ。なぁ相棒?」
話しをフラれた3匹の相棒はしれっとさらっと桃太郎を裏切った。
「俺はきびだんごのためで」
「でも現代はきびだんごより美味しいものが多すぎる」
「雇用形態が室町時代から変わらんから、正直転職を考えている」
「英雄の部下なのに何が不満なんだよ!!」
いや、不満でしょう。
お役所もなかなかブラックだけど、きびだんごだけでコキ使われるよりは遥かにマシだわ。
「要するに、社内で体育会系が一人だけ変に滾っていると、鬱陶しいということですよ」
「俺を冷静に分析するな!オニ!!」
「鬼です」
冷静な鬼灯様、素敵。
「あ、鬼灯様。ちなみに私は鬼灯様のために働いていますよ。えらい?」
「柳川さんは黙っていなさい」
「…」ワン
怒られた。