第5章 真白な涙
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@閻魔殿
「ただいま戻りました」
「あー、鬼灯君。遅かったねぇ。なんかあったの?」
「亡者の回収に手間取りまして。それでご相談なのですが…」
「鬼灯君が相談なんて珍しいね。何なに?」
鬼灯が合図をすると、2人の獄卒の間から白装束の椿が顔を出した。
「……柳川椿と申します…」
「この者の裁判をお願いします。少々特殊な事情で、他の王からは匙を投げられました」
「へー。資料は?」
こちらです、と鬼灯が差し出した資料を受け取る大王。
ふむふむと読む間、鬼灯が要点をまとめる。
「先程、この者の裁判が『少々特殊』と申し上げた理由は大きく二つです。まず1点目ですが、生前極めて誠実に生きてきたにも関わらず…」
「いえ、そんなことありません。私は罪深い人間です。地獄に落として下さい」
「…と、本人が地獄行きを熱望していることです」
「め、珍しい子だね…」
大王がちょっとひきながら目を丸くしている間にも、鬼灯は続ける。
「更に2点目ですが、この者、すでに人間ではありません」
「え!?」
「鬼火や猫叉、カマイタチ等が入り込んでいる状態です。状態としてはまだ不安定ですが、ほらこの通り」
そういって鬼灯は椿の前髪を上げる。
「小さいですが、角も生えています」
「あれま。それじゃあ鬼灯君と似たようなものじゃない」
「え…?鬼灯様も…」
「あぁ、私も元人間ですよ。柳川さんと同じで、人と鬼火のハーフです」