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黒猫の悪戯

第5章 真白な涙


***
@閻魔殿


「ただいま戻りました」

「あー、鬼灯君。遅かったねぇ。なんかあったの?」

「亡者の回収に手間取りまして。それでご相談なのですが…」

「鬼灯君が相談なんて珍しいね。何なに?」


鬼灯が合図をすると、2人の獄卒の間から白装束の椿が顔を出した。


「……柳川椿と申します…」

「この者の裁判をお願いします。少々特殊な事情で、他の王からは匙を投げられました」

「へー。資料は?」


こちらです、と鬼灯が差し出した資料を受け取る大王。
ふむふむと読む間、鬼灯が要点をまとめる。


「先程、この者の裁判が『少々特殊』と申し上げた理由は大きく二つです。まず1点目ですが、生前極めて誠実に生きてきたにも関わらず…」

「いえ、そんなことありません。私は罪深い人間です。地獄に落として下さい」

「…と、本人が地獄行きを熱望していることです」

「め、珍しい子だね…」


大王がちょっとひきながら目を丸くしている間にも、鬼灯は続ける。


「更に2点目ですが、この者、すでに人間ではありません」

「え!?」

「鬼火や猫叉、カマイタチ等が入り込んでいる状態です。状態としてはまだ不安定ですが、ほらこの通り」


そういって鬼灯は椿の前髪を上げる。


「小さいですが、角も生えています」

「あれま。それじゃあ鬼灯君と似たようなものじゃない」

「え…?鬼灯様も…」

「あぁ、私も元人間ですよ。柳川さんと同じで、人と鬼火のハーフです」








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