第5章 真白な涙
うーん、と考え込む閻魔大王。
資料を見て、椿を見て、鬼灯を見てもう一度唸る。
そしてこう言った。
「うーん、やっぱり駄目だよ。人じゃないものを裁く権利は僕にはないし、ましてや本来天国行きの人間を地獄行きにはできないなー」
「そ、そんな…!」
膝をつく椿を見て、鬼灯が続ける。
「…どうしても地獄にいたいなら、獄卒として働けばいいでしょう。ここは常に人材不足です」
「あぁそれいいね。衆合地獄とかどう?事情はお香ちゃんに話しておけば」
「ち、ちょっと待って下さい!私は罪人です!!ちゃんと地獄に落として下さい!!」
気が動転して閻魔大王に詰め寄った椿。
しかしあと4mのところで…
ガキィイィィンッ
「…」
鬼灯が目の前に振り下ろした金棒にビビって歩を止めた。
「あなた、自分が罪人だという認識があるなら、自分の行きたいところに行けると思わないことです。最大限の配慮をしているのですから、大人しく従いなさい」
「………は、ハイ…」
鬼のような(実際鬼だが)の顔をして金棒を携えた鬼灯に逆らえる輩はいない。
へにゃへにゃと腰を抜かした椿は両脇をガタイのいい獄卒に抱えられ、衆合地獄の寮へ引きずられていった。