第5章 真白な涙
はじめて出会った彼女は、遠くを見つめてぽろぽろ涙をこぼしていた。
重力にまかせ、ただただ落ちる涙。
彼女はそれを拭おうともせずに、
本当につらそうな顔をして遠くを見つめていた。
…その時の気持ちを、何と呼ぼう。
―5.真白な涙―
「ねぇ、鬼灯様」
「なんですかシロさん」
昼休みをあと半分ほどのこした時間。
既に午後の仕事に取り掛かっていた鬼灯の机に、シロが背伸びをして顔をだした。
「椿さんてさー、いつから鬼灯様と一緒にいるの?」
「ずっと昔ですよ。そうですね…現世に身分の差ができはじめたころですかね。どうしてそんなことを?」
「んー、なんか気になっちゃって。鬼灯様と椿さんの話聞きたいな!」
「まぁ本人も気にしないでしょうし構いませんが…あまり面白いものでもありませんよ?」
鬼灯がそういうとシロはまんまるな目をキラキラと輝かせた。
その様子をみた鬼灯はどうやら話す雰囲気になったと察し、諦めて筆を置く。
椅子に深く腰掛け、腕を組んだ。
…さて、どこから話そうか。