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黒猫の悪戯

第1章 悪戯好きの黒猫


***

「あ、いた」


鬼灯様発見!スケジュール通り針山にいた。

すぐ掛け出そうとする唐瓜くんの襟をクイッとひっぱって止める。
で、こそっと耳打ち。


「お願い!ちょっとだけ待っててくれない?私先に行くから」

「あ、はい」

「ありがと!ちょーっとだけ静かにしててね」

「??」


おかしな依頼に首をかしげる唐瓜くんだったが、一応頷いてくれた。
それを確かめてから、私は抜き足差し足忍び寄る。
勿論気配は消して。

どきどきわくわく。
このスリル感がたまらないのだ…!!

私の心臓は早鐘のように鼓動を刻んでいた。

都合のいいことに、鬼灯様は現場からの説明に集中しているのか、針山を向いたまま私には気付かない。

私と鬼灯様の距離は、もう1メートルを切っていた。

どきどきにやにや。

よし。せーのっ


「とりゃっ!!」

「ッ!?」


ガクンと膝をつく鬼灯様。

ふふふ…どうだ見たか椿・奥義!
忍び☆膝かっくん!!!


「あっはははははーーーー!!!!」


全力で笑う椿には、当然の如く制裁が飛んできた。


ブンッ
ゴンッ
ズシャーッッ


「おうふっ」

「椿さん!!?」


顔を青くして私に駆け寄る唐瓜くん。
でもなんでかな…君の顔がにじんで、よく見えないんだ…
やっぱ金棒って痛いよね…フツーに吹っ飛ぶよね…

大丈夫かな私?温かい液体が頭から流れてる気がする…


「まったく…柳川さん、何くだらないことをやってるんですか。置いてきた仕事、終わったんですか?」

「仕事の心配ですか!!私は!!?」

「いつものことじゃないですか」


唐瓜は思った。いつものことなのか…と。


「でも酷いですよ!私は大好きな鬼灯様ともっと親睦を深めたいだけなのに!!選んだ方法がボディータッチだっただけで…!」

「ずいぶんと乱暴なボディータッチですね」


これがそもそもボディータッチに分類されるのかは甚だ疑問である。


「しかし油断しました…柳川さん如きに背後をとられて気付かないとは。屈辱です」

「そこまでいいます!?私がここまで極めるのにどれだけかかっ……あ、これ駄目だ。なんか大きな声出したら頭が…」


うっ、と俯いて再び地面にへばる椿に、鬼灯は『自業自得です』と正論を浴びせた。
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