第1章 悪戯好きの黒猫
「見て下さい鬼灯様!似合いますか?」ドヤッ
誇らしげに胸を張りながら鬼灯様にみせる。
「…うーん、ちょっと歩いてもらえますか?」
「え、あるく…?まぁ、はい」
鬼灯様がそういうなら。
言われたとおりに3メートル程執務室を闊歩すると、ちりんちりんと控えめな音がした。
「いいですね。鈴の音がいい感じで響いています」
「…あの、鬼灯様。」
「はい」
「これってもしかして、私が近付いた時対策ですか…?」
「ええ、それが何か?」
「……イエナンデモナイデス」トオイメ
辛い。鬼灯様が期待させるから凄いつらい…涙
「あぁ、期待した私が馬鹿でした…」
「期待?」
「いえ…なんでも…あ、じゃあせめてもう一つご褒美下さい!昼間言ってた『二つ名』!!かっこいいやつ下さい!」
「そんなことですか。では【鬼灯のイヌ】で」
嫌じゃないけどかっこよさに欠けます!
「そうですか…まぁ、確かに柳川さんはイヌというよりは猫っぽいですしね」
「そうですか?さっき茄子くんにもイヌっぽいっていわれましたけど」
「いや、猫だと思いますね。気まぐれで好奇心旺盛で…なにより、悪戯好きです。…根に持ちますからね、ひざかっくん」
「ごめんなさいでした」
「なので二つ名は…『悪戯好きの黒猫』にしましょう」
うーん、かっこいいかは微妙だな…
「ちなみに鬼灯様、猫はお好きですか?」
「基本的に動物は好きですよ。猫も含めて」
…じゃあいっか。
「わたし!鬼灯様に可愛がってもらえるような猫になりますね!!」
「はいはい。可愛がって欲しかったらさっさと仕事終わらせなさい。待っててあげますから」
「!!!?い、一時間で終わらせます!!終わらせますのでちゃんと待っててくださいね!!!」
「いいからはやくして下さい」
「はい!!」
にっこにこで仕事に取り掛かった私は、宣言通り1時間で仕事を終わらせることに成功したのだった。
「(まったく…私がいなくてもこうしてればいいのに…)」
鬼灯様がこんなため息をついたことを、私は気付くよしもなかった。