第2章 鳴狐
そんな彼女の姿に、自然と眉が下がる。
そんな自分の姿を彼女に見せたくない、鳴狐はぎゅっと一度瞼を瞑ってから再び瞼を開いた。
眉が下がったままの、不器用な笑顔を向けて。
鳴狐「居る…だから、安心して」
普段通り出した筈の声が、僅かに鼻に掛かり掠れていた。
御付きの狐はいたたまれなくなり、審神者部屋から出て行ってしまった。
主「あのね…わた…し、治った…ら…鳴狐と…行きたいとこ…あるんだ」
鳴狐「どこ?」
ひゅーひゅーと弱々しい呼吸の合間に、消え入りそうな声で話す彼女の姿に唇を噛む。
悔しくて悔しくて仕方無かった。
見えていない筈の彼女に、見えていて欲しいと願って僅かに首を傾ける。
主「桜…鳴狐とおっきな桜の木を…見た……ぃ」
段々と薄れ行く意識の中、少女は言葉を紡ぐ。
希望を捨てていない彼女の言葉が、どんな物よりも鳴狐の胸を締め付けた。
力が抜けていく彼女の手を、強く握り締め祈る様に目を閉じる。