第2章 鳴狐
鳴狐「…行こう。主となら、何処へでも行く…だから、もう一度…笑って」
鳴狐が呟いた瞬間、彼女の手がぴくりと動いた。
驚いて彼女の顔を見ると視点の合わなかった瞳は鳴狐を捉え、鳴狐が大好きだった優しくて穏やかな笑顔が浮かべられていた。
鳴狐「……っ!!!」
溢れ出る涙を止める術を、鳴狐は知らなかった。
彼女の頬にぽたりぽたり、と鳴狐の涙の雫が落ちる。
主「……いつか…連れて行って……ね」
言うと、鳴狐の物か否か…右目から一滴の涙を流して彼女の体は完全に力を無くしてしまった。
鳴狐「……行こう」
涙を拭うと、真っ直ぐに前を見据えて鳴狐は少女を抱き上げた。
他の刀剣男士が騒ぎ立てるのも構わず、鳴狐は歩き続けた。
本丸から少し離れた立派な桜、鳴狐はその木の下に居た。
愛する少女を腕に抱いて…。