• テキストサイズ

審神者が死んだ日

第2章 鳴狐





静かな部屋に、主である少女の咳が虚しく響く。



御付きの狐「あああ、主様…!」



咳き込んだ後、口元を覆っていた手のひらは深紅に染まっていた。
おろおろと焦りを露にするは、鳴狐の言葉を代弁する御付きの狐。

血を吐き出し脱力した様に床に投げ出された手を、そっと掬い上げて血を拭う鳴狐。



鳴狐「………」



彼は何も言わない。
何かを口にしたら、臆病風に吹かれてしまうかも知れない。
もしかしたら弱音を吐いてしまうかも知れない。

鳴狐は拭って綺麗になったその手を、両手で握り締めて自らの額に添える。
何かを必死に祈る様に…。



主「なき……ぎつ…ね…」


鳴狐「……?」



彼女の目には、もう何も映らない。
ただ、其処に鳴狐という存在が居る…ただ其れだけを信じている様に名を呼ぶ。

僅かに首を傾けるだけの鳴狐、彼女の命の灯火が尽きようとしている事を信じたくない…その一心で声を発す事をしない。



主「声……聞きた…い」



静かに寂しげに、そして何処か甘える様に呟く。



/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp