第11章 陸奥守吉行
陸奥守「どういう事じゃ…主がおんしの言う禁忌を犯したとでもいうがか?」
物吉「あの方が自ら選んだんです。刀剣男士と恋仲になるという禁忌を犯した罪を背負う、と」
陸奥守は一瞬、目の前が真っ暗になった。
物吉の言うことが正しいとするならば、主は自ら死を選んだという事だろうか?
何より自分と恋をした事が罪であるとするならば、自分が罰せられるべきだ。
そう、陸奥守は胸の内で自問自答する。
陸奥守「主!」
主「……」
陸奥守「なして、なして何も言うてくれん!?なして主が死なんとならん?なら、わしが代わりに!!…っ!?」
代わり、そう言った瞬間、物吉の腕がグッと陸奥守を締め付ける。
物吉「全く…刀剣男士の代わりに審神者が死ぬなんておかしい話ですよね?それでも貴方の主はその選択をされたんです、その意味くらい…考えて差し上げて下さい」
政府「さあ早く」
主「はい」
陸奥守「主…主ぃぃぃ!!」
陸奥守には、審神者が光の玉へと吸い込まれていく様に見えた。
消滅する前、彼女は振り返り…。
主「陸奥守…愛してる…ずっとずっと…貴方がす…」
好き。
その言葉を言い切る事も出来ず、審神者は髪一本すら残さず消えてしまった。
陸奥守の目の前で。それは彼女が最も避けたかった事だったのだろう、最期に彼女は涙を流してしまった。
陸奥守「っ……うっ…ああああああああっっ!!!」
愛した女性を失って、陸奥守は泣き崩れた。
しかし、政府は彼に手を翳し無情にも記憶を消してしまった。それは、彼女が最後に望んだ事。陸奥守が死んでしまう事を恐れたのだ。
何で泣いているかも、どうしてこんなにも胸が張り裂けそうなのかも分からず、陸奥守は泣き続けた。
その後、新たな審神者が就任したあの本丸で陸奥守は過ごしていた。
ある日、自分の部屋である物を見つけた。
赤い、金で桜が描かれた女性物の櫛。
陸奥守「なしてこんなもんが…?」
その櫛を手に取った瞬間、陸奥守は胸にはじんわりと熱が広がり、陸奥守の目からは涙が零れ落ちた。