第11章 陸奥守吉行
木々の枝が頬を掠め、陸奥守の頬に僅かな切り傷をつけていく。
何れくらい走っただろうか、漸く辿り着いたのは政府の所有する審神者や刀剣男士を裁く裁判所。
闇落ちした刀剣や不正を働いた審神者、禁忌を犯した審神者や刀剣男士が裁かれる場所。
陸奥守「主、何処じゃ!?何処に居る!?返事せえっ!!」
中に入ると、陸奥守は審神者を探して駆け回った。
ふと窓の外を見ると、両脇を黒服の屈強な男に挟まれ歩く審神者の姿が目に留まった。
陸奥守「主!!」
陸奥守は駆け寄った。
しかし、あと少しで手が届くという所で後ろから追って来ていた政府の男二人に取り押さえられてしまった。
陸奥守の後頭部には、彼がいつも自慢そうに語る銃の銃口が、押さえ付けている政府職員の手によって向けられていた。
陸奥守「ああもう、臓糞の悪い連中じゃあ!離せ!離すぜよ!!」
主「やめ…やめて!彼には酷い事はしない約束の筈よ!」
自分には。そう聞いた途端、陸奥守の頭は血の気が引くかの様にスーっと冷静さを取り戻す。
陸奥守「主、わしにはいうんは…どういう意味じゃ?」
主「………」
苦虫を噛み潰した様な、バツの悪そうな表情を浮かべる彼女に、陸奥守に眩暈すら感じる程の不安が押し寄せる。