第11章 陸奥守吉行
政府の元に向かった審神者。
陸奥守は彼女の帰りを待ちわびていた。
帰ってきたら何をしようか…彼女の髪を撫でたい、あの小さな体をこの腕の中に閉じ込めてしまおうか。
陸奥守の思考は審神者の事で埋め尽くされていた。
しかし、昼過ぎになっても彼女は戻らなかった。
陸奥守「幾ら何でも遅すぎやあせんか?」
和泉守「政府の奴にお前との事を知られて、今頃こってり絞られてたりしてな?」
けらけらと軽く笑い飛ばす和泉守を横目で見ては、未だ不安を拭いきれぬまま、陸奥守は畳に体を投げ出すかの様に寝転んだ。
不意に、堀川国広が駆け込んできた。
堀川「兼さん!あ、陸奥守さんも!今、政府から通達があって!」
その後の堀川の言葉を聞いた途端、まるで世界の色や音を無くしてしまったかの様に、陸奥守は目を見開いて固まってしまった。
和泉守「…い、おい!陸奥守!しっかりしろ!」
陸奥守「………っ!!!」
和泉守に肩を掴まれ揺さぶられては、陸奥守の目は正気に戻ったとばかりに光を取り戻した。
次の瞬間、陸奥守は駆け出していた。
堀川「主さん、刀剣を汚したとかで政府に拘束されたって!これから裁判に掛けられて処分が決まるって……!」
堀川の言葉が頭の中で何度も何度もぐるぐると繰り返されていた。
ただ主に会いたい、主を守りたい。
ただ、愛する女性を取り戻したかった。
その一心で、陸奥守は山道を駆けた。