第11章 陸奥守吉行
審神者「ごめんね…」
その一言を呟くと、審神者は政府職員によって連れて行かれてしまった。
審神者の姿が見えなくなった後、陸奥守を押さえ付けていた政府職員が漸く彼を離した。
陸奥守は砂利を掴み、その掌に食い込む程に強く強く握り締めた。
ごめんね。
その一言がまるで無数の杭となって自らの身に突き刺さったかの様な、そんな衝撃。
しかし、陸奥守が彼女を諦めきれる筈も無かった。
かつて、お龍を愛した竜馬の様に…刀である事も忘れ、陸奥守は彼女を愛してしまった。
愛しいという気持ちは、そう簡単には止められるものでは無い。
陸奥守は政府職員の一瞬の隙を突き、彼女が連れて行かれた部屋へと駆けた。
そして、漸く彼女の霊力を感じる部屋の前へと着いた。
バンッ!!!
陸奥守は勢いよく、その扉を開いた。
政府「取り押さえろ!」
陸奥守「主!!」
ものの数秒の出来事であった。
得体の知れぬ、大きな光の玉の中に身を投じようとしている審神者。
その存在に駆け寄ろうとした瞬間、一人の政府職員に羽交い締めにされてしまう。
主「…!?」
陸奥守「それは何じゃ!?わしの主に何をしようというがぜよ!?」
眉間に皺を寄せ、目を大きく見開いて陸奥守はまるで牙をむいた狼の様な怒りを露にする。
政府?「あれは、禁忌を犯した罪深い者を葬る為の装置です」
陸奥守を羽交い締めにしていた政府が口を開いた。
しかし、その声は聞き覚えのある声。
そう、政府が所持している刀剣男士の一振り、物吉貞宗。
陸奥守よりも小柄で華奢な脇差である筈の彼だが、陸奥守がどう足掻いてもびくともしない程、この物吉貞宗は強かった。