第9章 三日月宗近
三日月「そうだな、昔の江戸とはまるで違う。あれが、今の世なのだな」
主「ふ…ふふ、建物も人も増えました…からね」
審神者が病に侵されているという事を除けば、和やかな日常。
しかし、彼女は明らかに弱っていた。
元より細かった手足は骨と皮のみであるかの様に細く、頬は痩けて窶れていた。
ふと、彼女が自らの身を抱き締める。
主「何だか急に恥ずかしくなってきました…」
三日月「ふむ、一体何を恥ずかしがる必要がある?」
疑問符を浮かべ、首を傾ける三日月。打って変わり、眉を下げて寂しげに微笑む審神者。
そして、審神者が再び口を開いた。
主「貴方には見られたく無かったもの…でも、いつも笑って側に居てくれる。大好きです、三日月」
そのまま寂しげに微笑んだままの彼女。
すると、不意に三日月は何も言わず立ち上がる。
そして踵を返した様に部屋から立ち去ってしまった。
主「……ごめんなさい、有り難う…三日月」
一人になった静かな部屋で、彼女は小さく呟いた。
頬を涙で濡らしながら。
一方、三日月は、ずんずんと自らの部屋へと真っ直ぐに歩いていた。
そして、部屋に着く手前で崩れ落ちる様に膝をついた。
三日月「行か…ないでくれ……主…!」
声を殺す様な悲痛な叫びを呟いて、廊下の壁を拳で殴り付けた。