第4章 薬研藤四郎
次の日も、その次の日も…彼女が目を覚ます事は無かった。
事が起きてから一週間後の朝、いつも通りに薬研は彼女の部屋に薬を持ってやって来た。
薬研「大将、今日の薬はちと自信作なんだ。もしかしたら一発で治っちまうかも知れないぜ……っ!!」
血の気無く青白い顔、僅かでも呼吸によって浮き沈みしていた布団が全く動いていなかった。
薬研は思わず薬が乗っていた盆を落とし、彼女の元に駆け寄った。
彼女の呼吸、脈等を調べる。
…彼女は、死んでいた。
しかし、薬研は悲しむ素振りを見せなかった。
彼女の頭を優しく撫で、静かに声を掛けた。
薬研「逝っちまったか…痛かったし苦しかっただろ?よく頑張ったな、偉かったな大将。」
そしてまるで存在を腕の中に閉じ込める様に、自分よりも僅かに大きい位の華奢なその体を抱き締めた。
すると、彼女が最後に残した言葉が甦る。
“ 主「私、何も…要らないよ…薬研が居る…なら…何も…」 ”
途端に、薬研の目からは大粒の涙が溢れ出した。