第2章 透鏡越しに 揺蕩う熱※
「きっ…す…!?何言っ」
後に続く言葉は、声として発することを許されなかった。
サボは私を抱き締めて、呼吸を奪うように、深い口付けを何度も落としていく。
返事をする時間を与えられず、強引に唇を塞がれても、私はそれを拒むことなどできなかった。
先程、雰囲気のせいか、なんとなく素直に自分の気持ちを話せていると感じていたが、今話したことが私の本心なのだとしたら、サボに気がないなんて言えないからだ。
遠くから見つめているだけでいい。
それは、単に革命軍への恩返しのつもりで、自分の役目を果たそうとしていたからだと、そう思い込みたかっただけなのだろう。
貴方は、照準器を、ガラス一枚を隔てた世界から覗く姿でさえ、微熱を帯びる程魅力的で。
だから、貴方の美しい横顔が、私の熱で、ガラス越しに揺らめくくらいの距離が、ちょうど良いと思った。
近くで見つめてしまっては、触れてしまっては、きっとどうにかなってしまうから。
それが今、こんな近くに。
それどころか…。
絡めとられた舌から体温が伝わる。
サボに与えられた熱は私より高くて、このまま融けてしまいそう。
舌を交えながら少し乱暴に頭を撫でる所作は、私の身体を震わせた。
うつ伏せの状態なのに、腰が砕けてしまいそうだった。
「…っ…サ、ボ……」
「xxxx…っ」
サボは、空間が許す限り上体を起こすと、私の上着のファスナーを下ろした。
露わになった首筋へ舌を這わせ、痕になるようなキスを落としていく。
鎖骨を甘噛みされるころには、堪らず声が漏れてしまった。
「ゃ…ァ…っ」
「xxxx…可愛すぎ…、我慢できねェ」
そう言うとサボは、私の身体を優しく撫で始める。
こんな場所で、こんな時に何を…と自らを叱咤する声が鳴り止まない。
しかし、止めたくても、なすがまま抵抗する手段がなかった。
私の身体は、最早このまま抱かれてしまいたいとも思っている。
サボのことが好きだとしても、仕事中にこんなことをしていいわけないのに…という議論に、脳内はシフトしていたのだ。
この後、二人の関係はどうなるのだろう。
もし最悪のタイミングで、助けに来た味方に発見されたら?
違う、何を考えているの…やっぱりやめなきゃ…。
しかしながら、私の一抹の不安は、意外な形で解消されたのだった。