第2章 透鏡越しに 揺蕩う熱※
「xxxx!」
声の方へ顔をやると、幹部報告を終えたであろうサボが駆け寄ってくるのが見えた。
サボとは色々あったけれど、またいつも通り接すればいい。
きっと食事の誘いか、さっきしたことの謝罪だろう。
「xxxx、総本部へ帰還したら…俺とデートしてくれ!」
「…ん?」
いつもと違うストレートな表現に少し戸惑っていると、サボが真剣な表情で口を開く。
「俺、xxxxのことが好きだ。今日のことがあってから、もっと…!xxxxと付き合いたいと思ってる。だから、ちゃんと見てほしいんだ。遠くからじゃなくて、近くで」
サボの真っ直ぐな言葉が、私の迷いを断ち切らせる。
どんな言い訳をしても、貴方は、隔てたガラスを融かしてしまう程の熱を宿していた。
そのおかげで、私は本当の気持ちに向き合えた。
違うって言い聞かせるのは、もう止めにしよう。
「うん、いいよ」
「だよなぁ…ってえッ!?ほんとに…?」
いつものように断られると思っていたのか、あるいは怒られると思っていたのか、サボは驚いた顔を見せる。
「もしかして、今日のこと責任感じてるとか…?」
「そんなことないよ」
「借りを返そうとか思ってない?」
「ううん、思ってない」
サボは真意を確かめるように質問するうちに、次第に嬉しそうな表情になると、どこ行くか考えとく!と言って去って行った。
一歩を踏み出せたことに、私自身驚いている。
本当は、ただ臆病なだけだったのかもしれない。
宙を見上げると、粉塵の隙間から覗く空が、徐々に広がっていた。
サングラスのない視界で見た空は、きらきらと美しい青色。
私は、都合よく解釈することに慣れて、傷つくことを回避して、一番大事なことをずっと忘れていたのだ。
色のある世界を、空が青いということを、忘れていたように。
デートだなんて、サボと何を話せばいいのだろう。
仕事の話ばかりになってしまわないだろうか…なんて考えてしまうくらいには、私の胸は少し踊っていた。
それよりも、果たして、遠征帰りでデスクワークが溜まっているであろう参謀総長に、デートをする余裕はあるのだろうか。
必死に仕事をするサボが目に浮かんで、くすりと笑みが溢れた。