第2章 透鏡越しに 揺蕩う熱※
一方、私にもサボの人気はよくわかるし、魅力的な人物だとも思っている。
例えば、仕事中は遠くから索敵する以外に、急なサインにも対応できるよう時折メンバの様子を伺うのだが、照準器越しに覗くサボの顔は実に様々だ。
整った横顔と真っ直ぐな眼差しはいかにもモテそうな好青年だが、子供のように笑ったり怒ったりした表情は可愛いとさえ思える。
取り巻きが騒ぎ立てるのも納得できた。
スコープ越しにサボを見つめる時間は、他の誰も知り得ない、私だけの特別な時間だった。
かと言って、取り巻き各位がこぞって付き合いたい!と叫ぶことはなく、どちらかというと、私は遠くから眺めているだけで十分だった。
幹部護衛をするうちに、これが革命軍に貰ったもう一つの命、もう一つの人生の使命なのだと思うようになっていたことが大きいように思う。
だから、この頼もしい若きリーダーが世界を変えていく様を、私は遠くから、照準器を隔てた世界から見届けたい。
*
護衛の仕事は定期的にやってくる。
革命軍は世界中のあちこちで活動しているため、幹部が次の現場へと移動する度に、私たちも同行した。
此度は、海賊による暴動の起きている街へ赴く間、サボを護衛する仕事だ。
「xxxx!今回もよろしくな!」
本部での作戦会議が終わると、サボは早速私に駆け寄り、屈託のない笑顔で話しかけてくる。
まるで人懐こい大型犬のようだ。
「あぁ、きっちり護衛するから安心してよ」
「じゃあ出発まで少し時間あるし、これから食事にでも…」
「もう!サボくん!xxxxさんの迷惑だからそういうのやめなよって言ってるでしょ!」
いつもの調子で食事に誘おうとするサボを、間に入ってコアラが嗜める。
コアラは状況をよく察し、こうして時々私を助けてくれるのだ。
「コアラ…!またオレの邪魔を!」
「しつこい男は嫌われるよ〜」
「そんなストレートに…!!」
こうして二人が夫婦漫才のような掛け合いをしているうちに、私はフェードアウトさせてもらっている。
夫婦漫才も含めたこの光景は他のメンバも周知のことで、皆慣れてきたのか、茶番のような感じでハイハイと流されている。
(これが良いのか悪いのかは別として…)