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リクエスト【ONE PIECE】

第1章 其の血の味は終ぞ知らず


ルッチは私の血を床に吐き捨てると、二度、三度と口をつけ毒を吸い出した。
その行為は短時間であるはずなのに、気が遠くなるほど長く感じる。

毒交じりの赤黒い血液が、不規則な円を床に落とす様を、私は横目に見つめていた。
そんなことをしても、時間は加速してくれないことなど分かっているはずなのに。

理由もわからず、私は模索していた。
心音を静かにさせる術を。
熱を帯びていく身体を鎮める方法を。


「…ッ!」

思考を止めさせようとでもいうのか、首に鈍い痛みが走り、反射的に身体が強張った。
鈍い痛みの正体はすぐにわかった。
ルッチが私の首に、歯を立てて噛みついたのだ。

驚きはしたが、その理由もわかっている。
血管を圧迫し、毒を押し出しているのだ。
しかし、そんなことはもうどうでもよかった。
情事を想起させる甘噛みのようなその行為は、私の思考を決壊させるには十分だった。

「力を抜け」

ルッチは僅かに首から唇を離し、低い声で囁く。

「ルッチさ、ん……っ…ッぁ…!」
「…痛いか?すぐ終わる」

幸いにも、思わず漏れてしまった声を、ルッチは痛みによるものと解釈している。
それでも、耳元で囁かれた声や、肌に口付ける音は煽情的で、どうしようもない感情に支配されていく。

このままどうにかなってしまいたいという欲求よりも、しっかりしろという自らを叱咤する思いが僅かに勝ったおかげで、私は理性を保つことができたように思う。


処置が終わるころ、すっかり脱力した私はルッチにもたれかかり、完全に身を任せてしまった。
うまく立てないのも半分は毒の影響であるが故に、ルッチは特に疑問もなく抱き留め、薬を取るからと私を傍らのベッドに腰かけさせる。

そして、伸びた手は首の傷ではなく、私の顔を持ち上げた。

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