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【弱ペダ·東】ビタミン剤

第4章 気づかないままで


「東堂君おはよう!」
「う、うむ」
最近の東堂君は、話かけるとこんな風に一度驚く様な素振りを見せる。そして
「おはよう名」
と、改めていつもより少しだけキラキラ度を増して返してくれる。
(絶っ対に何かあった。そうじゃなきゃ・・・)
授業中目があればキメ顔。
廊下ですれ違えばキラキラが出てきて、周りの子達にオーラがあたる。
物思いにふけてるかと思うとふとした瞬間に花が開いたかのように光がさす。
部活を見に!というのはなくなったが、これはこれで心配だ。
そう思いながら放課後、トントンと机の上で名が教科書を揃えて身支度を整えていると
「名!」
と東堂君が目の前に現れた。
「な、なに?!」
そう驚くと
「放課後時間はあるか?」
ときかれ、
「あ、ある、けど・・・」
どうして?と聞こうとするのと同時に東堂の顔が近づき
「今日こそ部活に来い」
と囁かれる。
途端、背中がぞくりとする。
ぞくりと言うよりはまた別の感覚。
名が急いで離れると満足気な東堂。
「必ずだぞ」
そう言って東堂は、顔を赤くした名を残して去っていった。
東堂の言う通りにその後、名が自転車部に顔を出すと
「東堂先輩は今外練習に出ております!!!!」
と言われてしまい、詳しい所を聞けば
「この坂昇らないと駄目なの??」
と長い坂道の前で途方に暮れる。
『あと一時間後には現れると思います!』
とも言っていた部員を思い返し、時計を見れば既に部室からだいぶ経っており
(間に合うはずがない。。。)
と思いつつ、
『必ずだぞ』
と嬉しそうな顔をする東堂を思い浮かべると
「はぁ」
とため息をつきつつ足が坂に向かった。


「はぁ、はぁ」
頂上まではあとどの位だろう。
バスがあることに気づきタイミング良く乗れたものの、頂上手前までだった。
だいぶ登った気がするのにまだ10分しか経ってない。
けれどもあと数分で東堂が来てしまう。
あの部活に来いというのは頂上で待てで間違いない気がする。
(だってなに?スプリンターだっけ?)
この様な坂を登る選手の総称
(山王だっけ?なら、見に来いって頂上に決まってる)
東堂の事だ、彼が一番輝くところなんてそこに決まってる。
あぁ、息切れがする。
坂が急になっていく気がする。
(これで来なかったら残念だ)
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