第3章 意外な一面
(けどまぁ、たまに嫌いな人とでも一緒に居る人とか居るし、それを考えるとちゃんと答えるべきなのかな?)
と再度東堂を見ると、少し身構えた東堂がいて、それがなんだか愛しくて、ふふっと笑みを浮かべて東堂を置いて先に教室に向かう。
「ちょっ、ちょっと待て!名!まだ返事は聞いてないぞっ!!」
後ろではそんな東堂と
「女の子にしつこいと嫌われるんだろ尽八」
とフォローしてくれる新開の声。
「む、それもそうだな。俺とした事がっ!名、この話はまた後でだ!」
と結局はただ先伸ばしにしたのがまた可笑しくて
「大丈夫!東堂君と一緒にいれば周りは明るくなるばかりだよ!」
と返し、返された当の本人は
「可愛くなかったか?!」
と部活中ローラーを回してそんな事を言っていた。
「ウゼェ」
と言う荒北と、それをなだめる真波と泉田。
「新開もあの時の名を見ただろ!?可愛かっただろ?!」
「名はいつも可愛いさ」
「今まで気づけなかった。あんなに可愛いのか!?」
ファンだファンだと思っていたのが違っていて、違うのに俺に声をかけてくれて、周りからの声も気にせず俺といてそんな事ないと言ってくれる!!
しかもあんな笑顔で!
「だからじゃねーのか」
と呆れ顔の荒北に真波が
「けどその先輩、相変わらず応援には来ないんですね?」
と東堂に少しは冷静になるかと思って言ってみれば
「あぁぁ!なぜあんなに名が可愛いと思ったのだ!」
と騒ぐ東堂。
「うわぁ、全く聞いてないやぁ」
「なんだかんだ名は尽八の好みだったんだろーな」
と呆れ笑う真波と優しく見守る新開。そして東堂はあらかた騒ぐと
「いかんいかん。今日の名の笑顔は新たな発見だったな!明日になれば落ち着くだろう。騒いで悪かった!」
と先ほどまでのテンションが嘘の様に落ち着き、練習に励む。
(・・・・激しくウゼェ)
(まぁまぁ)
(東堂さんが特定の子を誉めるなんて珍しいな)
(どんな先輩か気になるなぁ)
(・・・・)
と誰も何も言えず、言えずとも各々心にそんな事を思いつつ、再び今度はさらに真剣に部活に取り組んでいった。