第2章 気づいたのは ver東堂
来てみて、その目で俺が眠れる森の美男子だという事を知ってほしい。
「それに名は俺の・・・・」
「俺の?」
「・・・ファンだからな!ファンならば一度見に来るべきだ!練習なり試合なりいつでもいい!俺はいつでも整えてあるからな!」
そんな東堂の言う事は名にはあまり響いてないようで
「気が向いたら行くよ」
と笑顔で返されると東堂は一瞬困った表情をしてから笑みをうかべ
「ふ、俺からの誘いに断るなんてあいつ位だと思っていた」
と笑い去ってしまった。取り残された名はあいつとは?ときょとんとなり、その日から
「今日は?」
「今日はどうだ?」
「今日も調子良いぞ!」
「今日は試合形式だぞ!」
「今日は見ごたえがあるぞ!」
と日々お誘いを受ける様になった。しかも帰宅間際の別れの挨拶に自然と言ってくるのでファンからの嫉妬にも合うことはなく
(っていうか、女の子達が悲しまない様にバランス良く声をかけてるんだろうな)
と名を感心させた。
一方
「はぁぁぁぁぁ」
と東堂は部活中に一定時間毎にため息をつくようになった。
「あれー?東堂さんまだ勝てないんですかー?」
「うるさいぞ真波」
「ならそのため息やめろ東堂、ウゼェ」
ギャーギャー言いつつも速度が変わらないのはさすがレギュラーだろう。
「東堂は大丈夫か?」
「気になるの寿一?」
「元気がないあいつは珍しいからな」
「そうだね。けど大丈夫だと思うよ」
と福富と新開。そして、
「今日はどうだ?!」
「・・・・・東堂君。」
「今日こそは来てくれるだろう?」
と嬉しそうにしている東堂に
「行きたくなったら行くから・・・
『毎日誘わなくて良いよ』
と断られる。
「つれない!つれないぞ名ー!」
「東堂がウゼェ」
「ま、耐えてあげなよ」
「東堂さん相手にやるなぁその先輩」
と東堂を見守る周りと
「なぜだと思う?!」
『・・・俺が知るわけないっショ』
「まぁ巻ちゃんには縁のない話だものな」
『・・・切るぞ』
「すまん、悪かった。しかしファンならば相手を一度見たいと思うだろ?巻ちゃんだって俺の走りを見たい時があるだろ?」
『それはねぇけど』
「ないのか!?」
『ないっショ、気持ち悪い』
反論しようとしたのと同時に
『「本当にファンなのか?」』
と次の日、東堂は巻島と同じ問いを名にした。