第3章 【救国の忠騎士】救国の忠騎士
「その真書は、医者のボリスが書いたものです」
「ボリス…お父上、いや、我が一族が代々ずっと世話になっている医者だ。ならばボリスを呼んで参れ。彼の口から直接聞ければ、真実が自ずと明らかになろう」
「ボリスは亡くなりました。もう14ヶ月も前です。この真書を書き上げた後賊に襲われ…真書だけは私が守りましたが」
「なっ!?まさか貴様が、あの時の…!」
「あの時の…?」
ジークフリートの発言に、イザベラが狼狽の声を上げる。しかしそれはただ墓穴を掘っただけだった。自分でもしまったと気づいたイザベラは、ただ唸り声を上げるのみ。
「イザベラ…なぜボリスの死を、一年過ぎても私に教えなんだ…」
「そ、それは…ボリスが秘密裏にジークフリートと通じていたという確証がとれず…」
苦しい言い訳をしようとするイザベラを、芯の通った声が遮った。
「全空に誇りし竜の騎士団を持つ大国フェードラッヘの王、カールよ。先王、ヨゼフ様と交わした約束を果たすため…御前にて争う無礼をお許しください」
そう言い剣を構えようとするジークフリートの対面で、イザベラが泣き声を漏らし始めた。
「ランスロット…ねぇ、あなたはどっちを信じるの?」
「イザベラ様…俺は…」
究極の選択である。どちらが正しいのかを見定めるのは容易い事ではない。この選択により、この国の運命を決めてしまうかもしれない。サフィアはその背を見つめ、問いを投げかけた。
「貴方の信じる正義は何?」
「……」
ランスロットは答えない。答えを口に出す事ができない。そこで、煮えを切らしたヴェインが大声を上げた。
「うあーっ!もう!何がなんだか…俺にはわけわかんねぇよ!おい!ランスロット!」
「っ!?」
突然大声で呼ばれ、ランスロットは反射的にヴェインに顔を向ける。
「何が真実で何が嘘かなんて俺の頭じゃわかんねぇ!でも、お前の事は信じてる!だから、お前のやりたいようにやれ!その結果…たとえ世間がお前を国家に背いた大罪人と罵ろうが、俺だけは変わらずお前の親友だ!」
「私も、ランスロットについて行くわ。私達だけは、何があってもランスロットの味方でいるから」
「ヴェイン…サフィア…」
迷いを見せるランスロット。その様子に耐えきれなくなったイザベラが、彼ら諸共捕らえようと、兵を差し向けて来た。
