第16章 潜入、白鳥沢学園2日目〜仲直りの先〜
また工と目が合い、私は自然と顔が緩んでいくのが分かる。だらしないと分かっているけど止められず、そのまま工に笑いかけた。
「っ……」
その瞬間、工が目を見開いて息を呑むのが分かった。何故だろう、工の喉仏が上下に動くのが、やけにゆっくりと見えた。
それを不思議に思っていると、右手を握られている力がグッと更に強まり––––
「真白ちゃん、おめでとう!」
「「!?」」
その瞬間、鶴岡さんが私達の所に駆け寄り祝福してくれた。突然の事で驚いていると、その言葉を合図にあんなに静寂に包まれていた教室が嘘のように騒がしくなった。
「よく分からないけど、とりあえずおめでとう!」とか「やっと仲直りしたか!こっちまでヒヤヒヤしたんだからな!」など、クラスのみなさんが次々と笑顔で声をかけてくる。拍手も聞こえてくる程だ。
そこで私は思い出した。今自分が立っている場所が教室で、今までのやり取りをクラス全員に見られていた事に。
「あ、あの…その……」
理解した瞬間、今度は羞恥心が最高潮に達した。全身が急速に熱くなり、口からは意味の持たない言葉しか出てこない。
「うわっ!」
口をパクパクしていると、突然工に手を引っ張られ強制的に歩かされる。それに驚き「どうしたのですか!?」と聞くけど、聞こえていないのか足は止まらないし、工の顔がこちらに向く事もなかった。
(……て、鞄!)
「つ、工待ってください!私、まだ鞄を持ってません!」
「大丈夫!鞄は後で私が届けるから!」
そう言ってくれたのは鶴岡さん。その表情はニヤニヤしていて、何だか居心地が悪い。
でも届けると言ってくれた鶴岡さんに感謝しお礼を言うけど、全部言い切る前に私の身体は教室から出て行ってしまった。