第16章 潜入、白鳥沢学園2日目〜仲直りの先〜
そんな中、今の私の感情を占めているのは、言い切った達成感と工からどんな返事が返ってくるのかという恐怖だった。そのふたつの感情がドッと押し寄せたその時––––
「あ……」
工の手を握っていた両手を外され、今度は私の右手が工に強く握られる。片手なのにスッポリと覆われて、今初めて彼の手が私より大きいのだと気付きドキリと胸が高鳴った。
こんな感覚になったのはこれで3度目だけど、未だに慣れない。……慣れないけど、何故か分からないけど、嫌じゃなかった。
「なんで……」
「え……?」
ボーッと繋がれている手を見つめていると、不意に工が何かを呟いた。それがよく聞き取れず顔を上げると、グッと眉間に皺を寄せとても苦しそうな表情をする工と目が合った。
「なんで、真白が謝るんだ。どう考えたって、お前が書いてくれた置き手紙に気付かなかった俺が悪いのに……」
「そ、そんな事」
「ある!!」
「!?」
「あるんだよ…。なのに、謝らせてごめん。俺が意気地なしなばっかりに、いっぱい傷つけてごめん……」
「工……」
「っ、ごめん……!」
また無意識だった。
瞳から涙を零しながら謝り続ける工を見て、私は握られてない方の左手を伸ばしてそっと涙を拭う。やはり突然で驚いたのか、瞼がピクリと震えた。
「もう、謝らないでください。工の気持ちは、十分に伝わりましたから」
「でも……」
「……私は今この瞬間、工と仲直り出来た事がとても嬉しいのです。だから、もう謝罪は必要ありません」
工と仲直りする事が出来た。
その事実が、今の私にとって何より嬉しいものなのだ。
そう伝えると、工は目を見開いた後柔らかく笑った。
「……ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
だってこれでまた、工といつも通りに接する事が出来る。ただ普通に目を合わせて話す事がどんなに素晴らしくて尊いものなのか、今回の件でよく分かった。