第20章 潜入、白鳥沢学園3日目〜サトリ〜
「……私が、人間ではなくて妖怪である事に、驚かないのですか……?」
そんな疑問が頭の中で浮かんだ瞬間、思い通りに動かなかった口がすんなり動き、気付いたら1番聞きたかった事を私は口にしていた。
そう、普通は驚く筈だ。まだたった数日とはいえ、こんなに身近に空想上の生き物だと思われていた妖怪がいたのだから。
それなのに、覚さんは驚く事も動揺する事もなく普通にしている。天狐についてもそうだ。私には、それが心底不思議だった。
私の静かな問いかけに、覚さんはその大きな目を丸くした後、「あっ、あ〜……」と何かに納得したように頷いた。
「うん…うんそうだよねぇ。普通に考えて、そこを疑問に思っちゃうよねぇ」
「は、はい……」
「まあ、答えは簡単で、俺にとって『妖怪』って結構身近な存在なのよ」
「えっ!?」
まさかこの流れで、自分の方が驚く事になるとは思いもしなかった。きっと今の私は目も口も大きく開けて、間抜けな面を晒している事だろう。でもしょうがない。それだけ今の発言には驚かされたのだ。
そんな私に対して、覚さんは苦笑を浮かべながら手を振った。
「とは言っても、真白ちゃんみたいに本物の妖怪じゃあないけどね」
「……えっ、そうなのですか?」
「うん。あくまで妖怪みたいな存在」
「えっと…ちなみに誰なのか、聞いてもいいですか?」
少し悩みながらも聞くと、覚さんはこくりとひとつ頷いてくれて、今度は少し楽しそうな笑みを浮かべながら答えてくれた。
「まずは若利くん」
「若利さん……?」
はて、若利さんのどこが妖怪みたいな存在に見えるのだろうか。……いくら考えても理由が分からない。
「理由が分からないって顔してるネ」
「はい…。どうしてでしょうか?」
「若利くんって、一体どこから湧いてくるの?ってくらい、体力があるのよ。真白ちゃんも練習見て思わなかった?」
「あっ…はい、思ってました」
それは上から見ていた時から思っていた事だ。
いつだったかは忘れてしまったけど、側から見てもすごく体力を消耗しそうな練習を覚さん達はしていた。実際みなさんの顔は辛そうに歪めらていて、玉の汗が出ていた。でもそんな中、若利さんだけはまだ余裕がある顔をしていたのだ。流石に汗は出ていたけどね。