第15章 潜入、白鳥沢学園2日目〜黒鷲捜し開始!〜
その言葉を最後に、鍛治さんは1年1組の方に歩いて行った。先程言った通り、工以外の1年生にプリントを渡しに行くのだろう。
その後ろ姿を見送り、私は工にプリントを渡すのと2、3年生の教室に行くのを伝えるために教室に入る。そして自分の席に戻ったけど、そこで問題が生じてしまった。何故なら––––
「zzZZ……」
「つ、つとむ……」
肝心の工が机に突っ伏して寝ていたからである。手には辛うじてシャーペンが握られていて、今にも落ちそうだ。それを見て、工の手からシャーペンを抜き取り机の上に置く。そして起こすために工の肩を揺する。
「工、起きてください。予習しなくていいのですか?」
「ぅうん…、俺は、牛島さんを超えるエースに……」
「…………」
駄目だ。起きるどころか、寝言を言う始末。
その姿に思わずため息を吐きそうになったけど何とか飲み込み、プリントの束から2枚抜き取り自分の机の上に置く。そしてノートの端を切り、バレー部の2、3年生の所に行く事を書き留める。所謂置き手紙である。これなら、工が起きても私がいない理由に気付くだろう。
置き手紙を工の腕の下に忍び込ませ、私は教室を出た。
『それなら、そいつは今3年に化けてやがる』
階段を下りながら思い浮かべるのは鍛治さんのあの言葉。
黒鷲が今3年生にいるのなら、若利さん達にそれとなく聞けば何か分かるだろうか。
(……まあ、私が覚えてる特徴は『男性』と『赤い瞳』だけだけど……)
「…………」
それだけの情報で大丈夫だろうかと思いながら、ブレザーのポケットにそっと触れる。今このポケットの中には、大婆さまから貰った封印のお札が入っている。
(もし、黒鷲が昔と同じように『人間の絶滅』を企んでいるなら、封印の失敗は許されない……)
自然と額から汗が流れ、緊張が高まっていく。その緊張を解すために、小さく深呼吸した瞬間だった。