第14章 潜入、白鳥沢学園2日目〜記憶の『 』〜
「ごめん。さっきの忘れて……」
「え?どうしてですか?」
「どうしてって…。恥ずかしいし、何より子供っぽいだろ?」
「そうでしょうか?私は嬉しかったですよ」
「え」
「工が私の事を気にかけて下さっているのが分かって……て、何だか随分と自意識過剰な事を言ってしまいましたね!すみません!」
「い、いや大丈夫!」
「……本当ですか?引いてませんか?」
「うん、引いてない。むしろ「嬉しい」って言ってもらえて嬉しかった」
そう言ってくれた工の表情は照れ臭そうに笑っていて。その表情から、嘘を言っているようには見えない。
「よかった……」
その事実に心の底から安堵し、強張っていた顔が自然と綻んでいくのが分かる。引かれなくて本当によかった。
「…………」
安堵の息を吐いていた私は気付かなかった。
工が目を見開いて、私の事を凝視していた事に。
キーンコーンカーンコーン。
「「!?」」
話がひと息ついたところで鳴り響くチャイムの音。それは、朝のHRが始まった証拠で……。
「や、ヤバイ!先生に怒られる!」
「はい!みなさんも……っていない!?」
早く校舎に入らなくてはと思い、若利さん達にも促そうと彼らがいる方に振り返ったけど、そこには誰もいなかった。
「も、もう先に行ってしまったのでしょうか?」
「多分…。俺達も行こう!」
「はい!」
工と一緒に駆け出し、走りながらチラリと気付かれないように工を見る。やはり焦っているせいか、その横顔は険しい表情になっていた。
その表情を見ながら、私は自然と笑顔になっていくのが分かった。
(よかった。工と気まずくならずに、普通に話せて)
これも偏に若利さんのおかげだ。本当に感謝してもしきれない。
(ありがとうございます。若利さん)
心の中でもう一度お礼を言いながら、私は走る速度を速めた。