第14章 潜入、白鳥沢学園2日目〜記憶の『 』〜
失礼だけど、若利さんはどちらかというとそういう事には疎い方だと思っていた。でも、そうではなかったらしい。
(それか、若利さんでも気付くほど顔に出ているのかな。私)
素直に答えていいのか分からず言い淀んでいると、若利さんは手当てをしている指から視線を外し、今度はじっと私の顔を見てきた。
「答えたくないのならそれでもいい。だが、内に溜め込んでおくより、誰かに吐き出した方がいい」
「!」
「と、この前クラスメイトが話しているのを小耳に挟んだ」
「若利さん……」
確かに、内に溜め込んでおくより、誰かに吐き出した方が気分がスッキリするかもしれない。少なくとも、今よりかは確実に。
「えっと、それでは聞いてもいいですか?」
「ああ」
「……了承を得ずに、勝手に相手の記憶を消去したのは間違いだと思いますか?」
「……記憶の、消去?」
「あっ!?えーっと、漫画で!漫画でこんな場面があって!つい色々考えてしまったのです!」
「そうか」
私の苦しい言い訳に気付かず、若利さんは軽く頷いてから考えるように目を閉じた。そして考えが纏まったのか、閉じていた目を開けて真っ直ぐこちらを見てきた。その一切の曇りがない瞳が私に突き刺さり、自然と背筋が伸びる思いがした。
「俺はそういう場面に出くわした事はないが」
(大丈夫です。普通に生活していれば、まず出くわす事はないですから)
若利さんの前置きに、心の中で返事をしながら続きを聞く。
「その記憶を消去した奴も、何か色々考え実行したのだろう?」
「……はい」
考えて考えて、私はこの決断をした。
でも何だろう、その時の夢を見たせいか、それで本当によかったのかと今更ながらに思ってしまったのだ。
(勝手に記憶を弄るなんて、やっぱ)
「なら、少なくとも俺は間違っているとは思わない」
「え……」
「どういう状況でそうなったのかは知らないが、そう決断したのなら最後まで貫き通せ」
「あ……」