第14章 潜入、白鳥沢学園2日目〜記憶の『 』〜
––––トットットット。
食堂の厨房に立ち、目の前にある野菜を無心で切っていく。
「……っ」
と言いたいところだけどやはりそれは無理で、先程の夢が頭の中で勝手に何度も繰り返される。夢は起きたら忘れる方が多いとよく聞くけど、私の場合はそうではないらしい。
思わずため息を吐きそうになった瞬間、ぬっと目の前に影が出来た。
「白鷲、早いな」
次いで聞こえてきた、聞き覚えがありすぎる声。その影と声に驚き顔を上げると、そこには黒いTシャツを着た若利さんが立っていた。
「わ、若利さん!?……っ」
突然の若利さんの登場に驚き、思わず大声で名前を呼んだ瞬間左手に違和感を感じた。その感覚に手元を見てみると、左手の指から血が少し出ていて、包丁で切ってしまったのだと分かった。
自覚した途端、じんじんと痛みだす指。やってしまったと思っていると、左手首を若利さんに掴まれて、無言で手を引っ張られ歩かされる。
「わっ!?若利さん、どうしたのですか!?」
「どうしたも何も、至急手当てが必要だろう」
「あっ」
「す、すみません…。ありがとうございます」
「いや。元はと言えば、俺が急に話しかけたせいだろう。すまなかった」
「そ、そんな…!私は大丈夫です!擦り傷ですし!」
「擦り傷でも甘く見ない方がいい。いつ、どこでばい菌が入るか分からないからな」
「あ、はい……」
……………
(き、気まずい……!)
あの後食堂の椅子に座らせられ、救急箱を取りに行って戻って来た若利さんに切ってしまった指の手当てをしてもらっている。
その間に会話が途切れてしまい、気まずい雰囲気が流れる。いや、もしかしたらそう感じているのは私だけかもしれない。
何か話題がないかなと慌てて探していると、表情を変えずに若利さんが口を開いた。
「何かあったのか?」
「え」
「昨日に比べたら元気がないと思ってな。……違ったか?」
「…………」