
第12章 潜入、白鳥沢学園1日目〜人の優しさ〜

「!」
う〜んと悩んでいると、何やら天童さんの後ろで動く影が。その影を天童さんに気付かれないように見ると、そこには瀬見さんと牛島さんがいた。
いつの間に持ってきたのか、大きな白い紙を持って瀬見さんが何かを書き始めて、その紙を牛島さんに渡す。そして牛島さんが首を傾げながらも、白い紙を両手で掲げた。
紙に書いてあった文字は––––
『天童の名前はさとり!!』
「! 分かりました!『さとり』さんです!」
少しズルイかもしれないけど、工の言う通り先にインチキしてきたのは天童さんの方だ。瀬見さん達に感謝しながら遠慮なしに答えたけど、天童さんは正解とも不正解とも言わない。その代わりに口元に手をやって顔を俯かせてしまった。
「ど、どうしたのですか?天童さん」
「!? ちょ、今俺の顔見ちゃダメ!」
急に具合でも悪くなったのかと思って顔を覗き込もうとしたけど、天童さんは慌てながらそう言って後ろを向いてしまった。でも後ろには瀬見さんと牛島さんがいて。
「ウヒャア!?英太くんと若利くんなんで……って、ヤバ」
「おい、天童どうして」
「英太くん言っちゃダメ!」
「?顔が赤いぞ、天童」
「若利くーん!!」
せっかく瀬見さんを阻止したのに、その努力空しく牛島さんに真実を言われてしまった天童さん。悲しい叫びが食堂に響いた。
(それにしても……)
そんな天童さんを少し可哀想だと思いながらも考える。どうして天童さんは顔を赤くさせているのかを。
「もしかして天童さん、白鷲に大声で名前を呼ばれて照れたとか?なーんて……」
「…………」
「え」
そんな中、工が人差し指を立てて笑いながら冗談みたいに言ったその言葉に、天童さんはさらに顔を赤くさせて。
その瞬間、今度は笑い声が食堂に響いた。
「ちょっ…!マジかよ天童!」
「お前がそんなんで照れるとか、大受けだわ!」
「英太くんに隼人うるさいよ!」
「よかった。覚にも、まだそういう心が残ってたんだなぁ」
「どういう意味かな獅音!?」
「天童さんにも、そういうピュアな心があったんですね」
「そんな天童さんに、痺れもしないし憧れもしなーい」
「賢二郎と太一はハウス!」
「す、すみません天童さん!俺」
「工は明日まで口きいてあげない!」
「そ、そんな〜……!」
「…よく分からないが、元気を出せ天童」
「…うん。ありがとう、若利くん」
