第12章 潜入、白鳥沢学園1日目〜人の優しさ〜
「フッフッフ。それじゃあ最後!俺のフルネームは?」
「はい!天童………あれ?」
天童さんのフルネームを言おうとして、出てこない。『名前』が。
(あ、あれ?おかしいな。何で天童さんの名前だけ出てこないんだろう……)
その事実に困惑しながらも、必死に思い出そうとする。でも結果は駄目で、全然名前が出てこない。
天童さんだけ覚えていないなんてすごく失礼だ、と思いながら顔を青くしていると、白布さんが思い出したように口を開いた。
「そういえば天童さん、自己紹介の時名前言ってなかったですよね」
「賢二郎気付いちゃった?……その通り!この時のために言わなかったんだ〜」
「ええ!?」
名前を言われてなかったのなら、道理で出てこない訳だ。失礼な事じゃなくてよかったと思う反面、それじゃあどうしようと困ってしまった。名前を知らないのだから、これでは答えようがない。
「そ、そんなのインチキじゃないですか!白鷲は天童さんの名前を知らないのに!」
「工言うね〜。……でも、真白ちゃんは最初に承諾したんだから、後戻りは出来ないよ〜」
「くっ……!」
「大丈夫。そんな真白ちゃんのために、3回チャンスをあげるから!」
「3回……!」
その3回で天童さんの名前を当てなくてはならない。当てられなかったら、彼らの前で恥ずかしい出来事を暴露しなくてはいけなくなるから。
(そういえば上で見ている時、鍛治さんが怒鳴りながら天童さんの名前を叫んでいたような……)
確か最初の方に『さと』がついていたような。意識して聞いていた訳じゃなかったから、あまりよく思い出せない。
「ん〜〜……。あっ!『さとる』さん!」
「っ、ブッブー!違いまーす!」
「天童さん、今ちょっとドキッとしたでしょう」
「うるさいよ太一!」
「それじゃあ……『さとし』さん!」
「それはポケ○ンの主人公の名前!」
「うっ……」
大変だ。残りはあと1回だけになってしまった。
ここは慎重に考えなければ。
(とは言っても、もう候補が……!)
そもそも最初が本当に『さと』なのかも分からないのに、このままでいいのだろうか。