第12章 潜入、白鳥沢学園1日目〜人の優しさ〜
「コホン。それでは気を取り直して、まずは我らが主将の若利くんに挨拶と乾杯をしてもらいましょう!」
「ん、分かった」
牛島さんは席を立つと、天童さんがいる前へと歩いて行く。
「よろしくネ〜、若利くん」
「ああ……これはいるのか?」
「うん、いるいる!超いるから、ちゃんと持ってネ〜!」
「分かった」
そして今度は牛島さんが前に立って挨拶をし始めるけど、私は笑いを堪えるのに必死で内容までは頭に入る事が出来なかった。何故なら、天童さんから渡されたであろう、おもちゃのマイクが壊滅的に似合っていなかったからである。
「ブフッ…自分で渡しといて何だけど、若利くん…似合わなすぎ……!」
「天童…笑うなんて、若利に…っ…失礼だろ……!」
「そういう…英太くんだって、笑ってるじゃん……!」
「こ、こらお前ら…っ、ちゃんと若利の…話聞かなきゃ…駄目だろ……」
「いや…っ、こんなの、平常心で…聞けないだろ……!」
「お、俺は…っ、どんな牛島さん…でも、しっかり…受け止めて、みせます……!」
「む、無理する…なよ、白布……!」
しかもそう思ったのは私だけではなかったみたいで、ほとんどの人がおもちゃのマイクを持った牛島さんを見ては笑いを堪えていた。そんな中、工だけは「お、俺だって、挨拶のひとつやふたつくらい……!」と、謎の対抗心を燃やしている。
でも、牛島さんはそんな私達に気付いていないのか、いつもの無表情で淡々と挨拶をし続けた。……おもちゃのマイクをしっかり握りしめながら。
「ハイ、ちゅうも〜く!みんなでご馳走をたらふく食べたところで、真白ちゃんに問題を出すヨ〜!」
「え!?」
あれから牛島さんと工以外笑いを堪えながら乾杯をした後、目の前に並べられた豪華なご飯に箸をつけた。ご飯は食堂のおばさん達が栄養バランスを考え、丹精を込めて作ったものだったみたいで、とても美味しくて頬っぺたが落ちそうだった。
そんなご飯を同じテーブルで囲んでいたスタメン+瀬見さんと談笑しながら食べ終わった頃、突然天童さんが立ち上がってそんな事を言い出したから驚いた。