第11章 潜入、白鳥沢学園1日目〜初めての感覚〜
「たく……。真白、悪いがお前は工を看ててくれないか?」
「はい!分かりました」
「他の連中は、いつも通りサーブ練から入れ」
鍛治さんの指示にみなさんは返事をした後、ゾロゾロと私達から離れコートに入っていく。大平さんも「工をよろしく頼むな」と私に託した後、彼らに続いて行った。
その姿を見送り、改めて工の様子を見る。先程よりかは顔色が良くなっているけど、まだ油断は出来ない。そっと寝かせた後、何か欲しい物はあるか聞くけど、工からの返事がない。
「工!?返事」
「すー……」
「へ……?」
それに驚き、慌てて声を掛けようとした瞬間、工の口から小さな寝息が聞こえてきた。よく見ると、眉間に少し皺を寄せながらも、工は寝ていた。
「お、驚かさないでください……」
その事実に安堵して、何だかどっと疲れてしまった。仕返しとばかりにぐりぐりと工の眉間を押すと、「う〜…、それ以上は食べれません」という寝言が聞こえてきた。……一体何の夢を見ているのやら。
思わず少し笑ってから、工の頭をそっと持ち上げ自分の膝に乗せる。体育館の固い床より、こちらの方が寝心地がいいだろう。
工の頭を優しく撫でながら、私はそっと呟いた。
「お休みなさい、工」
「ん……。あれ?俺……」
「あっ、工起きたのですね」
あれから工が寝てしまった後、斉藤さんからスタメンのサーブが決まった回数を記録して欲しいと頼まれしている最中、工が薄っすらと目を開けて起きた。やはり寝起きだからか、声が掠れていたけど、顔色は大分良くなっていた。
「具合はどうですか?部活に参加出来そうですか?」
「…………」
「……工?」
記録しているからコートから目を離さず具合はどうか聞くけど、また工からの返事がない。それを不思議に思い、思わず工の方に顔を向けると、目を細め何だかボーッとした様子でこちらをじっと見ていた。
「ど、どうしたのですか?」
「………名前」
「名前……?」
「………俺の、名前」
「?………っ!?」
工の言いたい事がよく分からず首を傾げながら考えた後、ようやく自分の失態に気付いた。